さつまいもの秘密|青木昆陽が救った命、朝顔と兄弟、石焼き芋の科学が解き明かす5000年の物語

さつまいもの秘密 アイキャッチ

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「さつまいもは、じゃがいもの仲間ではなく、朝顔の仲間って知っていましたか?」

焼き芋、スイートポテト、大学芋、芋けんぴ、天ぷら、味噌汁の具──秋の食卓に欠かせない、ホクホク・しっとり・甘い土の塊。けれどその一本には、中央アメリカ・5000年前から始まる壮大な旅と、江戸時代の大飢饉から100万人を救った「甘藷先生」の物語が眠っています。

この記事では、書店の図鑑には載っていない切り口で、さつまいもを深く掘り下げていきます。コロンブスとマゼランがヨーロッパへ持ち帰った話琉球(沖縄)から薩摩へ4ルートで伝わった経緯青木昆陽「甘藷先生」と享保の大飢饉戦時中の主食として日本人の命をつないだ歴史石焼き芋が甘くなるβ-アミラーゼ酵素の科学、そしてアフリカ・宇宙の未来食まで──。

子どもには「へぇ!」を、大人には「そうだったのか」を。読み終わるころには、明日の焼き芋ひとつが、人類の救済史を語り始めるはずです。

目次

🍠 1. さつまいもは「土の中の朝顔」── ヒルガオ科の意外な家族

さつまいもは、植物分類上、驚くべき兄弟関係を持っています。

学名はIpomoea batatas ─ ヒルガオ科サツマイモ属

さつまいもの学名はIpomoea batatas。「Ipomoea」はラテン語で「ヒルガオ属(朝顔の仲間)」、「batatas」は南米先住民タイノ語で「芋」を意味します。植物分類上はヒルガオ科サツマイモ属。じゃがいもとはまったく別のファミリーです。

同じヒルガオ科の兄弟を並べると、意外な顔ぶれが現れます。

ヒルガオ科の兄弟 共通の特徴
さつまいも 食用・塊根
朝顔(アサガオ) 夏の花・つる性
昼顔(ヒルガオ) 日中咲く花
夕顔(ユウガオ) ※じつは別科(ウリ科)
ヨウサイ(空心菜) 葉野菜・東南アジア料理
クマツヅラ 観賞用ハーブ

つる性の植物で、地下に栄養を蓄える性質を共通して持ちます。夏に紫やピンクの朝顔のような花を咲かせるさつまいも畑を見たことがあれば、それが「朝顔の親戚」であることを実感できます(ただし日本の本土では気候の関係で花が咲きにくい)。

食べる部分は「根」 ─ じゃがいもとの決定的違い

さつまいもとじゃがいもは見た目は似ていますが、食べている部分はまったく違います。

項目 さつまいも じゃがいも
ヒルガオ科 ナス科
原産地 中央アメリカ 南米アンデス
食用部位 塊根(こんかい)=根 塊茎(かいけい)=茎
芽の毒 なし あり(ソラニン)
甘い でんぷん質

さつまいもは「肥大した根」を食べるため、「芽」は出ません(伸びるのは「つる」と「葉」のみ)。だから皮を厚くむかなくても安全で、芽の毒の心配もなし。お子さんに「土の中の野菜」を比較で教える絶好の教材です。

ヒルガオ科ファミリー:さつまいも・朝顔・昼顔・空心菜

朝顔・昼顔・空心菜 ── すべてさつまいもと同じヒルガオ科の兄弟

世界では「Sweet Potato」、日本では「薩摩芋」

世界共通の英名はSweet Potato(甘いポテト)。アメリカの先住民タイノ語の「batata」が、スペイン語経由で英語の「potato」に変化し、後から伝わったじゃがいもが「potato」を奪ってしまい、本家のさつまいもが「sweet」を冠することになった── という名前の歴史も面白いところです。日本では「薩摩から広まった芋」として「さつまいも(薩摩芋)」と呼ばれます。地域によっては「甘藷(かんしょ)」「唐芋(からいも)」「琉球芋」などとも呼ばれ、伝来経路がそのまま名前になっています。

大人もうなる雑学 ①

さつまいもの葉と茎も食べられる
東南アジアでは、さつまいもの葉と茎(カモテンドン/空心菜系)を炒めて食べる文化があります。日本でも沖縄では「カンダバー」と呼ばれ、味噌汁の具などに使われてきました。葉にはビタミンK・ルテイン・ポリフェノールが豊富。「実だけでなく葉も食べられる」のは、根菜のなかでも珍しい特徴です。家庭菜園でさつまいもを育てる人は、収穫時に葉も食卓に並べてみてはいかがでしょうか。

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📜 2. 中央アメリカ5000年 ─ コロンブスがヨーロッパへ持ち帰った

さつまいもの故郷は、じゃがいもよりさらに北、中央アメリカでした。

原産地は中央アメリカ・メキシコ高原

さつまいもの原産地は、中央アメリカ(メキシコ中部からグアテマラ付近)とされます(じゃがいもの南米アンデスとは別系統)。紀元前3000年以前から栽培されていたとみられ、5000年以上の栽培歴を持つ作物です。アステカ・マヤといった古代文明の食卓を支えていました。

1492年、コロンブスがヨーロッパへ持ち帰る

1492年、クリストファー・コロンブスが新大陸に到達した第一回航海で、現地でさつまいもに出会いました。彼はこれをスペインに持ち帰り、ヨーロッパ初の「アメリカ大陸からの新作物」として紹介します。じつはじゃがいもより約80年早くヨーロッパに伝わったのです。

当時のヨーロッパ人にとって、さつまいもの甘さは衝撃でした。砂糖がまだ高級品だった時代、「土から甘いものが採れる」のは奇跡のような出来事だったのです。スペイン国王・イザベル1世の宮廷でも珍重されたとされます。

1521年、マゼランが太平洋経由でフィリピンへ

1521年にはフェルディナンド・マゼランの世界周航艦隊が、太平洋ルートでフィリピン・東南アジアへさつまいもを伝えました。これがフィリピン・中国・東南アジアでの普及の起点になります。大航海時代、さつまいもは大西洋ルートと太平洋ルートの両方から世界を一周した数少ない作物です。

明(中国)伝来 ─ 万暦帝の時代に飢饉対策に

16世紀末、さつまいもは中国・福建省に伝わります。当時の中国(明王朝)では深刻な飢饉が頻発しており、福建の役人・陳振龍(ちん・しんりゅう)がフィリピンから命がけで持ち帰った苗を、息子と共に栽培普及に成功。これが中国南部での飢饉救済の決定打となりました。「中国の飢饉を救った野菜」として、現在も中国の歴史教科書に掲載されています。

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🇯🇵 3. 琉球から薩摩へ ── 4ルートで日本へ伝わった驚異

さつまいもが日本に伝わったルートは、ひとつではありませんでした。

1605年、野国総管が琉球(沖縄)へ持ち帰る

日本への最初の伝来は1605年、琉球王国の野国総管(のぐにそうかん)という人物が、中国・福建省から琉球(沖縄)へ持ち帰ったとされます。野国総管は中国に渡る進貢船の船員で、現地で見たさつまいもを「これは琉球の民を救う」と確信し、苗を持ち帰ったのです。

琉球はもともと台風が多く、稲作が不安定でした。さつまいもはこの厳しい環境にぴたりと合い、琉球王国の主食として一気に普及します。野国総管は今も沖縄県嘉手納町で「芋大主(ウムウフズ)」として神社に祀られ、毎年9月には「総管祭」が行われています。

1698年、種子島に伝来

琉球から薩摩への伝来は1698年(元禄11年)、種子島の島主・種子島久基が琉球王から苗を贈られたことが始まり。種子島から薩摩本土の山川(鹿児島県)に渡り、前田利右衛門という人物が薩摩半島で栽培を広めました。前田は今も「甘藷翁(かんしょおう)」として鹿児島の徳光神社に祀られています。

1705年、薩摩で本格普及 ─ 「薩摩芋」の名前の由来

1705年頃から薩摩藩で本格栽培が始まり、「薩摩から広まった芋」=薩摩芋(さつまいも)という呼び名が定着していきます。薩摩藩はシラス台地という痩せた火山灰土壌で米作りに苦労していましたが、さつまいもなら痩せた土地でも、台風が来ても、雨が少なくても育つ──薩摩藩の食を支える救世主となりました。

日本伝来「4ルート」のまとめ

時期 ルート 到達地
1605年 中国(福建)→琉球 沖縄(野国総管)
1698年 琉球→種子島 種子島(種子島久基)
1705年頃 種子島→薩摩本土 鹿児島(前田利右衛門)
1735年 薩摩→江戸 関東(青木昆陽)

4つの段階を経て、さつまいもは日本全土へ広がっていきました。それぞれの段階に「救世主」と呼ばれる人物が存在し、現代も各地で神社に祀られている── これほど人々に深く感謝された野菜は珍しいでしょう。

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📚 4. 青木昆陽「甘藷先生」── 江戸の飢饉から100万人を救った男

さつまいもの日本史を語るうえで、絶対に外せない人物がいます。

享保の大飢饉(1732年)── 200万人が餓死寸前

1732年(享保17年)、西日本一帯を享保の大飢饉が襲いました。ウンカの大量発生で稲が壊滅し、推定200万人が飢えに苦しんだとされます。公式報告では餓死者約12,000人とされる一方、後の『徳川実紀』では死者97万人と記録される史料もあり、実際の被害規模はさらに大きかった可能性が指摘されています。いずれにせよ日本史上でも有数の大飢饉です。

このとき、薩摩藩だけは死者が極端に少なかった。理由はさつまいもでした。「薩摩には飢饉に強い芋がある」── この情報が江戸に伝わります。

青木昆陽の登場 ─ 8代将軍・徳川吉宗が登用

江戸の儒学者青木昆陽(あおき・こんよう、1698-1769)は、薩摩芋の効用を熱心に研究し、『蕃薯考(ばんしょこう)』という詳細な栽培書を執筆します。これが将軍徳川吉宗の目に留まり、昆陽は幕府に登用されます。

吉宗は1735年、青木昆陽に江戸での試験栽培を命じました。栽培地は、現在の東京都江戸川区「小石川薬園(小石川植物園)」と、下総国馬加村(千葉県幕張)上総国不動堂村(千葉県九十九里)の3か所。寒冷な関東でもさつまいもが育つことを実証したのです。

「甘藷先生」の名で関東に普及

青木昆陽の試験栽培成功により、関東一円にさつまいもが普及。江戸の人々は彼を「甘藷先生(かんしょせんせい)」と呼んで深く感謝しました。1745年に天保の大飢饉が来たときも、関東は薩摩芋で乗り切ったとされ、100万人以上の命を救ったと評価されています。

千葉県幕張には今も「昆陽神社」があり、青木昆陽が祀られています。東京・目黒の瀧泉寺(目黒不動)にも昆陽の墓があり、お参りに訪れる人が絶えません。日本の食糧史を変えた一人の儒学者が、今も人々の記憶に生き続けているのです。

青木昆陽が小石川薬園でさつまいもを育てる江戸時代の場面

青木昆陽「甘藷先生」── 享保の大飢饉から100万人を救った江戸の儒学者

大人もうなる雑学 ②

「栗(九里)より(四里)うまい十三里」── 川越のキャッチコピー
江戸時代後期、埼玉県・川越のさつまいもは江戸で大評判でした。商人たちは「栗より美味い」と宣伝するために、駄洒落で「九里(栗)より(4里)うまい十三里」というキャッチコピーを発明。川越から江戸まで約13里(約52km)あることにかけたものです。日本最古のグルメ・キャッチコピーとも言われ、今も「川越=さつまいもの街」のブランドを支えています。江戸時代の人々のセンスの良さが、グルメ広告の世界に痕跡を残しているのです。

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🍙 5. 戦時中の主食 ── 日本人の命をつないだ薩摩芋

さつまいもが日本人を救ったのは、江戸時代だけではありません。

太平洋戦争末期(1944-1945年) ── 米不足の代替主食に

第二次世界大戦末期、日本国内は深刻な食糧難に陥ります。米の配給が止まり、多くの家庭でさつまいもが米の代わりの主食となりました。「芋粥」「芋ご飯」「蒸し芋」などが食卓の中心で、当時の子どもたちは「芋しか食べた記憶がない」と語ります。

1945年、日本政府は「決戦食糧緊急措置要綱」を出し、全国の校庭・空き地・河川敷をさつまいも畑に転用。学童が校庭でさつまいもを育てる「学童食糧増産運動」が展開されました。

戦後復興期も支えた「芋の時代」

戦後数年、米が再び入手できるようになるまで、日本人は「芋の時代」を過ごします。お弁当の主食は蒸し芋、おやつも蒸し芋、夕飯も芋粥── 戦後復興を支えた食糧として、さつまいもは決して忘れられない存在です。

1950〜60年代、米が再び主食に戻ると、さつまいもは「貧しい時代の記憶」として一時期敬遠される傾向もありました。しかし1980年代以降、焼き芋ブーム・スイーツブームでカムバック。今や「健康・美容に良い高級スイーツ食材」として再評価されています。飢饉救済から贅沢スイーツへ── さつまいもの社会的地位の変化は、戦後日本の豊かさの変遷そのものです。

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🔥 6. β-アミラーゼの魔法 ── 石焼き芋が甘くなる科学

さつまいもの最大の魅力「甘さ」には、はっきりとした科学的理由があります。

主役は酵素「β-アミラーゼ」

さつまいもには、β-アミラーゼ(ベータ・アミラーゼ)という酵素が大量に含まれています。これはでんぷんを「麦芽糖(マルトース)」に変える働きを持つ酵素。麦芽糖は砂糖の約3〜4割の甘さを持ち、さつまいもの甘さの正体です。

「70℃前後で長時間」が黄金ルール

β-アミラーゼがもっとも活発に働く温度は65〜70℃。この温度帯を長時間維持すると、でんぷんがどんどん麦芽糖に変わり、さつまいもは劇的に甘くなります。逆に高温(100℃以上)で短時間に加熱すると、酵素が失活してしまい、甘くなりません。

調理法 温度・時間 甘さ
石焼き芋 70℃前後・60〜90分 ★★★★★最高
低温オーブン 160℃・80分 ★★★★甘い
蒸し(じっくり) 90℃・40分 ★★★甘い
電子レンジ(標準) 600W・5分 ★やや甘い
電子レンジ(解凍モード) 200W・15分 ★★★★甘い

家庭で「石焼き芋」を再現するコツ

家庭の電子レンジでも、解凍モード(200W前後)で15分加熱すれば、石焼き芋に近い甘さを引き出せます。さらにアルミホイルで包んでオーブン160℃で60分焼くと、本格的な石焼き芋風に。お子さんと「石焼き芋実験」をするのは、夏休みの自由研究にもぴったりです。

「貯蔵で甘くなる」キュアリング

さつまいもは収穫直後より、数週間〜数か月貯蔵したほうが甘くなる性質を持っています。これは「キュアリング」という処理(温度33℃・湿度90%で3〜4日間)と、低温貯蔵中にデンプンの一部が糖化することで起こります。だから秋に収穫したさつまいもが、冬になるほど甘くなるのです。八百屋さんで「熟成芋」と表示されているものは、このキュアリングを経たもの。覚えておくと買い物が楽しくなります。

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💪 7. 知られざる栄養 ── ヤラピン・食物繊維・皮の力

「甘くて高カロリー」と思われがちなさつまいもですが、栄養面ではむしろ優等生です。

ビタミンCはリンゴの約7倍 ─ しかも加熱に強い

さつまいものビタミンC含有量は100gあたり29mg。リンゴ(6mg)の約5倍に相当します。しかもじゃがいもと同じく、でんぷんに守られて加熱後も多く残るのが特徴。これは野菜の中でも特殊な性質で、焼き芋でビタミンCをしっかり摂取できる稀有な食材です。

栄養素 含有量(生100g) 意外なポイント
ビタミンC 29mg リンゴの約5倍・加熱に強い
食物繊維 2.2g じゃがいもの約2倍
カリウム 480mg むくみ・血圧対策
ビタミンE 1.5mg 抗酸化作用
β-カロテン 28µg(紅芋系は1000µg超) 品種で差あり
ヤラピン 皮と実の間に多い 便通改善作用
カロリー 132kcal 米より少ない

「ヤラピン」─ さつまいも特有の便通成分

さつまいもを切ると白い乳液が出てきます。これはヤラピンという樹脂状の成分で、さつまいも特有の物質。便を柔らかくし、腸の蠕動運動を促す働きがあるとされ、便通改善作用が古くから経験的に知られてきました。ヤラピンは皮と実の境目に多く含まれるため、便通効果を期待する場合は皮ごと食べるのがおすすめです。

皮には食物繊維・ポリフェノールが豊富

さつまいもの皮には食物繊維とポリフェノール(アントシアニン系)が、実の部分の2〜3倍含まれています。とくに紫芋系の皮は、ブルーベリーに匹敵するポリフェノール量。安納芋や紅はるかも、皮ごと食べることで栄養価がぐっと上がります。よく洗って皮ごと食べるのが、栄養学的には正解です。

※健康効果には個人差があります。便秘改善などを目的に大量に摂取される場合は、医療機関や管理栄養士にご相談ください。

アフリカで「失明を防ぐ野菜」── オレンジスイートポテト

近年、国際的に注目されているのがオレンジスイートポテト(OFSP)。果肉がオレンジ色の品種で、β-カロテン(ビタミンA前駆体)が非常に豊富です。アフリカではビタミンA不足による失明・小児死亡が深刻な問題ですが、OFSPの普及によって解決が進んでいます。国際馬鈴薯センター(CIP)が中心となって品種改良を進め、2016年には世界食糧賞を受賞。今や「世界の栄養問題を解決する野菜」としても評価されています。

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🗾 8. 鹿児島・茨城・徳島 ── 全国産地リレーと多品種時代

日本のさつまいも生産にも、興味深いリレー構造があります。

日本一の産地は鹿児島県

農林水産省「作物統計」によると、日本のさつまいも生産量は約72万トン(2022年)、そのうち鹿児島県が約21万トン(全国シェア約29%)でトップ。シラス台地の火山灰土壌は、水はけが良く、さつまいも栽培に理想的なのです。続いて茨城県、千葉県、宮崎県、徳島県の順。

順位 都道府県 シェア 特徴
1位 鹿児島県 約29% 紅はるか・安納芋・コガネセンガン(焼酎用)
2位 茨城県 約25% 紅あずま・紅まさり・干し芋日本一
3位 千葉県 約13% 紅あずま・川越芋の流れ
4位 宮崎県 約11% 南九州の良質芋
5位 徳島県 約4% なると金時のブランド

多品種時代 ─ あなたの好みはどのお芋?

近年、さつまいもは品種戦国時代に突入。各品種が独自の味と食感で勝負しています。

品種 食感 得意料理
紅あずま ホクホク 焼き芋・天ぷら・蒸し
紅はるか しっとり甘い 焼き芋・スイートポテト
安納芋 ねっとり蜜のよう 石焼き芋・冷やしても美味
シルクスイート 滑らかしっとり 焼き芋・スイーツ
なると金時 ホクホク・上品な甘さ 大学芋・天ぷら
紫芋(パープルスイート) ホクホク・色鮮やか 洋菓子・色付け
隼人芋 カボチャのよう 蒸し・煮物

茨城県「干し芋王国」── 全国シェア9割

茨城県は干し芋の生産量で全国シェア約9割を占めます。とくにひたちなか市・東海村・那珂市の海岸沿いは、冬の冷たい潮風が干し芋作りに最適。江戸時代から続く伝統食品として、今も家族経営の小さな工房から大手メーカーまで、多くの干し芋が作られています。最近は「丸干し」「平干し」「角切り」など多彩なバリエーションが登場し、贈答品としても人気です。

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🎵 9. さつまいもの歌

「たっさん家の図鑑」では、各題材につきオリジナル楽曲を制作し、Spotify・Apple Music・YouTube Music・Amazon Musicなどの主要音楽配信サービスでお届けする予定です。

🎼 さつまいもの歌(仮)
準備中:青木昆陽と石焼き芋の科学をテーマにした全年齢向け楽曲
Spotify埋め込みプレイヤーをこの位置に挿入予定

楽曲が公開され次第、この記事に埋め込みプレイヤーを追加します。家族で一緒に聴きながら、さつまいもの物語を想像する読書時間を目指しています。

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まとめ:一本の薩摩芋に、5000年の救済史が眠る

長い記事を最後まで読んでくださってありがとうございます。最後に、この記事で扱った「8つの秘密」を整理しておきます。

  1. さつまいもはヒルガオ科サツマイモ属。朝顔・昼顔・空心菜と同じ家族で、じゃがいも(ナス科)とは別ファミリー。食べているのは「根(塊根)」で、芽の毒もない。
  2. 原産は中央アメリカ(メキシコ中部〜グアテマラ付近)・5000年の栽培歴。1492年コロンブスがヨーロッパへ、1521年マゼランがアジアへと、大西洋・太平洋両ルートで世界を巡った。
  3. 日本へは4ルートで伝来。1605年野国総管が琉球(沖縄)へ→1698年種子島→1705年薩摩→1735年青木昆陽が江戸へ。それぞれに「救世主」がいた。
  4. 青木昆陽「甘藷先生」が享保の大飢饉(1732年)を機に関東に普及。『蕃薯考』を著し、徳川吉宗に登用された。100万人以上の命を救ったとされる。
  5. 太平洋戦争末期(1944-45年)、米不足の代替主食として日本人の命をつないだ。校庭・河川敷をさつまいも畑に転用する「学童食糧増産運動」も展開。
  6. 甘さの正体は酵素β-アミラーゼ。65〜70℃で長時間加熱すると、でんぷんが麦芽糖に変わり最高に甘くなる。石焼き芋・低温オーブン・電子レンジ解凍モードが甘さを引き出す調理法。
  7. ビタミンCはリンゴの約7倍で加熱に強い。ヤラピンという固有成分で便通改善。皮にはポリフェノール豊富。アフリカではオレンジスイートポテトがビタミンA不足を救っている。
  8. 日本一の産地は鹿児島県(約29%)、続く茨城は干し芋シェア9割。紅あずま・紅はるか・安納芋・シルクスイートなど多品種時代に突入している。

明日の食卓のさつまいもを口に運ぶとき。「これは中央アメリカから、コロンブスとマゼランの大航海、琉球の野国総管、青木昆陽の小石川薬園、戦時中の校庭、そして今のスイーツブームまで、5000年の救済史を旅してきた根なんだ」と思い出してみてください。一本の焼き芋が、人類の物語を語り始めるはずです。

たっさん家の図書館では、これから食卓の図鑑シリーズとして、さまざまな野菜や果物の知られざる物語を順次お届けしていきます。次回もまた、書店の図鑑には載っていない「家族で楽しめる秘密」をお伝えします。


主な参考情報源:農林水産省「作物統計(かんしょ)」/文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」/青木昆陽『蕃薯考』(1735年)/鹿児島県農政部「かごしまの農林水産物」/茨城県農林水産部「いばらきの干し芋」/徳島県農林水産部「なると金時」/嘉手納町「野国総管・甘藷伝来400年記念誌」/徳光神社(鹿児島市)「前田利右衛門公由緒」/昆陽神社(千葉市花見川区幕張)/国際馬鈴薯センター(CIP)「Orange-fleshed Sweet Potato」/世界食糧賞2016年受賞報告/FAO「FAOSTAT 2022」ほか

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この記事を書いた人

三姉妹のパパ「たっさん」です。
育休10ヶ月を取った30代会社員。
家族で実際に楽しんだ絵本・まんが・アニメを、
年齢別おすすめ・正直レビュー・パパ目線で発信しています。

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